コラムvol.04 「あなたが世界を変える年」
- 2012年02月02日
- 同窓生コラム
福岡大学法学部同窓生によるリレー式コラム。
今回のコラムは井上文博(第4回目)さんです。
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あなたが世界を変える年
1973年卒の井上文博です。財団法人ふくおか環境財団に勤めています。
2011年は3月11日の東日本大震災、大津波、原発事故が重なり、地球環境を根本から考えさせられる年でした。三陸沖を震源地とするマグニチュード9の海溝型地震が発生し、宮城県栗原市築館では震度7を記録しました。この地震に伴う大津波で岩手県、宮城県、福島県、茨城県など三陸沿岸から関東地方沿岸では壊滅的な被害(死者数15,845人、行方不明者数3,380人:2012.1.20現在)が発生しました。阪神・淡路大震災の死者数6,434人を大幅に上回り、戦後最悪の災害となりました。
また、東京電力福島原子力発電所では、地震で自動停止したものの津波により冷却能力を失い、国際原子力事象評価レベル「7」の深刻な原子力事故が発生し、「原子力安全神話」が脆くも崩壊しました。
国のエネルギー政策を根本から見直し、
震災復旧・復興の取組みを進めていかなければなりません。
地震、大津波、原発事故が重なり、経済活動では、GDP比△3.5%、国家予算の2割相当額の影響(西日本シティ銀行久保田頭取)があると言われています。
これまで地震対策は、阪神・淡路大震災(1995年)や福岡県西方沖地震(2005年)などの経験を踏まえて、講じられてきたはずですが、大自然の営みの前では、人間の無力さを感じました。そして人間は地球環境の中で無数の生物の一つに過ぎないことを改めて、教えられました。
私が、福岡市役所環境局に異動(2006年)し、地球環境について考えるきっかけとなった『リオの伝説のスピーチ』をご紹介します。今から、20年前のブラジルのリオ・デ・ジャネィロで開かれた国連の「地球環境サミット」(1992年)でセヴァン・スズキという日系カナダ人の12歳の少女が世界各国のリーダーを前に6分間のスピーチをしました。多くの人々の感動を呼び、『リオの伝説のスピーチ』と呼ばれるようになりました。
~ 『 リオの伝説のスピーチ 』の抜粋です。~
『こんにちは、セヴァン・スズキです。カナダの12歳から13歳の子どもたちの集まりを代表してお話しします。あなたたち大人のみなさんにも、ぜひ生き方を変えていただくようお願いするために、自分たちで費用をためて、カナダからブラジルまで1万キロの旅をしてきました。私がここに立って話をしているのは、未来に生きる子どもたちのためです。世界中の飢えに苦しむ子どもたちのためです。そして、もう行くところもなく、死に絶えようとしている無数の動物たちのためです。
あなたたち大人にも知ってほしいんです。あなたたちもよい解決法なんてもっていないっていうことを。オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。50億以上の人間からなる大家族。3千万種類の生物からなる大家族です。みんながこの大家族の一員であり、ひとつの目標に向けて心をひとつにして行動しなければならないことを知っています。
もし戦争のために使われているお金をぜんぶ、貧しさと環境問題を解決するために使えばこの地球はすばらしい星になるでしょう。それはあなたたちの子ども、つまり私たちのためです。みなさんはこうした会議で、私たちがどんな世界に育ち生きていくかを決めているんです。しかしあなたたち大人がやっていることのせいで、私たちは泣いています。あなたたちはいつも私たちを愛しているといいます。もしそのことばがほんとうなら、どうか、ほんとうだということを行動でしめしてください。』(翻訳:ナマケモノ倶楽部)
このセヴァン・スズキさんは、2002年エール大学でエコロジ―と進化生物学で理学士の学位を取得後、ヴィクトリア大学大学院で伝承民族植物学を研究し、現在、著述家として世界中で環境問題について講演活動を展開中です。
福岡市の環境行政は、博多祇園山笠に代表されるように、市民の自治精神を尊重し、自ら考え、行動するきっかけづくりを支援することを基本原則にしています。私の息子が、今年カナダに音楽の勉強のため留学を予定しており、機会があれば、彼女の話を聴くように勧めるつもりです。
今年、2012年は、私たち一人ひとりが、地球環境にできることをじっくり考え、行動し、世界を変える年にしたいと考えています。
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次回は、当コラムプロジェクトの提唱者、中尾香織さんです。お楽しみに。