コラムvol.26「司法サービスを届けるということ」


平成28年卒(JJ12) 藤田大輝

平成28(2016)年に福岡大学法学部法律学科を卒業しました。弁護士の藤田大輝です。福岡大学卒業後、福岡大学法科大学院に進学・修了し、令和2年司法試験に合格しました。私はいま、ひまわり基金弁護士として、離島にお住まいの方に司法サービスをお届けしています。

このコラムをご覧の皆様は、「司法過疎地」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ここでいう「司法過疎地」とは、弁護士が不足している地域を指します。弁護士がいない、または不足している地域では、法的な紛争や困りごとがあっても弁護士に相談することができず、泣き寝入りしたり、無資格の事件屋などに法外な費用を請求されて中途半端な解決を押し付けられたりします。そこで、日本弁護士連合会では、司法過疎地のうち弁護士が0人または1人しかいない地域を「ゼロワン地域」と呼び、「ゼロワン地域」解消及び発生予防のための活動をおこなっています。その活動の1つが「ひまわり基金法律事務所」の設置です。

ひまわり基金法律事務所は、これまで累計で124か所が設置され、1999年当時73か所あったゼロワン地域は、弁護士ワン地域2か所にまで減少しました(令和6年8月時点)。人権の最後の砦である「ひまわり基金法律事務所」、そこで日本全国津々浦々まで司法サービスを届ける役目を負っているのが、ひまわり基金弁護士です。

私は、長崎県対馬市に設置された対馬ひまわり基金法律事務所の第9代目所長弁護士として採用され、主に対馬全島を活動範囲として司法サービスをお届けする日々を送っています。

韓国との国境にある対馬は、南北に約82km、東西に約18kmの広さを有する大きな島であり、南端の厳原町から北端の上対馬町まで自動車で約2時間の移動時間を要します。2万6663人の人々が生活しており(令和7年6月30日時点)、本土と同じように、相続や交通事故をはじめとした様々な法的トラブルが発生します。

対馬のような離島で司法サービスを届けるということは容易ではありません。往復4時間かけて相談を受けにうかがうこともあります。島内にいる弁護士が限られているため、採算が合わない依頼を断ることはできません。島外の裁判所で期日が開かれれば、飛行機やフェーリーに乗って裁判に出席します。台風などの天候不良で島から出られない、島に帰れないこともあります。それでも私は、対馬で生活する皆様に司法サービスをお届けします。

それはなぜなのか。対馬に赴任してから日は浅いですが、私は対馬が大好きになりました。白嶽や浅茅湾をはじめとした雄大な自然、国防・交易の要衝地としての長く深い歴史、そして対馬を愛する地元の人々。対馬には言葉で表し尽くせない魅力があります。そんな素晴らしい対馬で生活をしている人々が、対馬で生活をしていることを理由に、適切な司法サービスを受けられないということは、決して許されることではないと信じているからです。

対馬で生活をしているか福岡市内で生活をしているかにかかわらず、困っている方に司法サービスをお届けできる弁護士という仕事は、人生をかけて取り組む価値のある仕事だと思っています。そんな弁護士になる基礎を作っていただいた福岡大学にはとても感謝しています。

我らが母校、福岡大学への感謝の言葉をもって、本コラムを締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

※撮影者は藤田大輝です。